桜の樹の下


用足しの途中で通る墓地に咲く桜があまりにも美しいので写真を撮る


人間は著しく美しいものを見ると拒否反応を示すのかもしれない
かつて金閣寺を焼失させた一人の僧はその動機を
「美への嫉妬」と表現した


例えば花見の席で桜の花の美しさへ「反応」を示す人間はどれくらい居るのだろう?
桜の木の下で行われる宴会はむしろ美しさへのボイコットなのではないだろうか?


かつて梶井基次郎は桜が美しい理由を「桜の樹の下には死体が埋まっているから」などとトチ狂った事を言っていた
まさに彼は目の前に広がるあまりに美しい桜に狂わされてしまったのだ


この墓地に咲く桜がなぜあんなにも美しく見えるのか
それは最早美醜を問わなくなった無辜な魂達が見つめているからだ
外道である僕はそんな風に思うのだ…