映画の死

映画の中で描かれる死というものは多種多様だ
中でも当時の人々に衝撃を与えたであろうというのは
「俺達に明日はない」「イージーライダー」「明日に向って撃て!
アメリカンニューシネマを代表する三本だろう*1
特に「明日に向って撃て!」はヒッピーの死滅した21世紀でも
脈々とパターン化されて受け継がれている
ポストジャーマンニューシネマなんて言われてた頃の「バンディッツ」なんてまさにそうだろう


ただ俺が知る決して多くはない「映画の死」でも際立っているのが
ゴダールの「気狂いピエロ」のラストだ
ハッキリ言って俺はゴダールの映画なんて観ても全然意味分からん
ただ一つ言えるのは気狂いピエロはあのラストがあるからゴダール映画の中でも数少ない娯楽作品に成り得たのではないか?ということだ
全てが裏切りだと悟った主人公は自らの頭にダイナマイトを巻き付け自殺を図る
しかし突然我に返り「嫌だ!こんな“死”は!」と叫び出すのだ
俺はハッキリ言ってこの映画をここまで観てた感想は「原色の使い方がきれいだなぁ」くらいなモンだったんだが*2
主人公が突然自分の死を拒否するシーンになって観客もハッと我に返るのだ
「まぎれもないこれは映画だ、そしてこのスクリーンの写る人物の人生が終わろうとしている」

うまく表現できないのだが
それまで映画の中の人物達が「こんなの映画じゃん」なんてヘラヘラしながら生きてるのに
突然自分たちの生を回帰して「死にたくない」と言い出すのだ
そこで観客もハッと我に返るのである
紛れもない気狂いピエロはあのラストシーンがあって初めて娯楽作品として成り立っているのだ


もう一つ印象的な映画の中の死を挙げるなら「モンティ・パイソン 人生狂騒曲」の中でグレアム・チャップマンが演じた死刑囚だろう
死刑囚は自ら死刑の方法を選んで良いと告げられ大勢の全裸の美女に追い掛けられながら崖から転落して死ぬのだ
ちなみに何の因果かグレアム・チャップマンはこの6年後早過ぎる他界をしてしまう
テリー・ギリアムに骨壺を蹴っ飛ばされたりしながら
グレアム・チャップマンはパイソンズのメンバーに見守られながらこの世を去った
人生狂騒曲の中で彼が演じた死刑囚は自らを暗示しているかのようでもあった…

*1:明日に向って撃て!については異論が多々あるのだが

*2:当時中学生だったってものあるんだろうけど