日本プロレスのショー要素が低いのを「カール・ゴッチが空を飛んだ事があるか?」と揶揄することがたまにあります僕は

WWEを観てると本当に試合の組み立てがうまいと思う
アングルから試合に持ち込む組み立てではなく
試合自体の展開が魅力的という意味だ
それはもちろんアメリカで揉まれた
身体と能力を持つ部分も多いのだろうが
日本と比べるとやはり大きな違いを感じる


アメリカと日本のプロレスではメジャーとインディーの分け方が違うようだ
ハッキリ言ってしまって俺もきちんとは把握していないのだが
アメリカンプロレスの場合テレビショーを定期的にやるのをメジャー団体と呼ぶそうだ
故にかつての買収劇で一人勝ちをおさめたWWE(当時WWF)のみがアメリカにおいてメジャー団体
活動規模が大きくてもNWA-TNAはインディーということになる
本当はもうちょっと違いがあるはずなんですけどね


日本プロレス減退の理由は沢山あるだろう
この話をしてると八百長論まで行ってしまってキリがない
ただ俺が思うに「アメリカに負けた理由」を問われれば
一つにテレビショー(テレビ興行)が今現在日本に存在していない事が挙げられるのではないだろうか?


ここで言うテレビショーとは単にテレビで放送される興行という意味ではない
テレビ放送に最適化された興行ということだ
WWEのテレビショーはタイタントロンと呼ばれる大画面でスキットと呼ばれる編集された映像が流れる
これによりより緻密なアングルを組むことが可能になっている
それだけではない
テレビカメラに追わせる事により本来「どこを向いても良い」状況である観客の視線を
意図的に操作できる
乱入するレスラーの入場部分を敢えて映さず興奮を煽ったり
こっそり退場する負けた選手をカメラで映さない事でより
観客=視聴者のテンションを維持できるのだ


まあWWEの演出の話題なんかそれこそ本一冊書けるのでこのくらいにしておくが
俺がそれよりも日本との差を大きく感じるのは上記の通り試合運びの違いである
例えば打撃技、おそらく最前列で観ている観客はナックルが実際は当たってないことや
ストンピングをわざと外してるのが見えるはずなのだ
しかしカメラアングルの調整によりテレビに向けにされたプロレスリングは
それで十分すぎるほどの迫力を得られる
カメラワークにより実際は危険すぎて不可能な攻撃も可能になるのだ*1


ただ最大の日本との相違点は試合の構成ではないかと思う
かつてミスター高橋氏が自著の中で
「プロレスファンは流れる技の攻防を好むが自分はゴリゴリした技のぶつけあいが好きだ」
と記していた
実際トレーニング法の進歩により日本プロレスラー達の技術は飛躍的に向上した
フィニッシュムーヴをぶつけあい、まさしく武を競うかのようになったのだ
ただこれはハウスショーで観客を盛り上げるには十分なのだが
テレビ中継には必ずしも向いていない
テレビは会場のテンションまでは伝達できない
リラックスできる自室のブラウン管あるいは液晶画面の
一歩引いた形でモニターに映る試合を観ると
必殺技のぶつけあいに冷めてしまうのだ
プロレスを全く観ない人は退屈という印象を受けるかもしれない


WWEの日本人スーパースターであるタジリ選手も
この「フィニッシュムーヴを出し合うレスリング」に疑問を感じていたようだ
実際WWEの試合を観ると「どうフィニッシュムーヴまで持って行くか」
言い換えると3カウントの瞬間に達するカタルシスをどれだけ大きくするか
に重点を置いているのだ


ただ同じ事を日本でやれというのは無理がある
上記のテレビ向けプロレスはアングルの展開を中心に置くアメリカンプロレスならではの
試合の短さの上に成り立っている
今日本のプロレス興行で同じ事をやったらテレビでも会場でも退屈なファイトになってしまうのだ


現状日本でもWWEのような演出を持ち込もうとするレスラーが居ないわけではない
ただ深夜多くて一時間の放送しかないプロレス中継で同じ事をやるのは難しいと思う
個人的にはその前に団体の乱立や横の繋がりに目を向けるべきでは?と思うのだ


ハッキリ言って俺はプロレスリングに対する姿勢は日本よりアメリカの持つ価値観の方が好きだ
理由は単純に「楽しいから」である
近年格闘技ブームで日本のプロレスはそれさえ忘れてしまっている感がある
確かに強い男達のファイトは魅力だ
しかし格闘技認知度の高い日本において重要なのは
それこそ力道山が持ち込んだショー的要素…カタルシスなのではないだろうか?
プロレスは格闘技じゃない
いやむしろ格闘技であるなどと名乗ったら
プロレスが持つ本来の魅力が薄れてしまう
流れる技の攻防
強い力のぶつかりあい
それらで俺達に感動を与えてくれる最高の「ショー」なのだ


とまあ
そんな夢を見た
プロレスは男と男の真剣勝負
夜更かしできなかったらビデオに予約録画して観ようぜ
楽しいよ

*1:別にWWEの選手が実際はぬるい事やってるって言いたい訳じゃないです